金鉱探しの真実
1849年、カリフォルニア・ゴールドラッシュ。
何十万人もの人々が、一攫千金を夢見てカリフォルニアに押し寄せた。
彼らは皆、同じ場所を掘った。新聞に載った「金が出た」という場所を。
結果はどうなったか?
金を掘り当てた人より、スコップを売った人の方が儲かった。
全員が同じ場所を掘っている間に、本当に賢い数人は、誰も気づいていない別の渓流で、静かに金を集めていた。
これは、今のSEO市場でも全く同じだ。
全員が「キーワードプランナー」というスコップを持って、同じ場所(高ボリュームキーワード)を掘っている。
一方、本当に賢い人々は、誰も気づいていない金鉱脈を、独自の方法で見つけている。
この章では、あなたに「金鉱脈の探し方」を教える。
ツールに頼らず、競合がいない場所を見つける、4つの体系的な方法だ。
発掘の前提:「見つける」のではなく「設計する」
従来のキーワードリサーチは「探索」だった。
ツールを開いて、データを眺めて、「おっ、これ良さそう」と見つける。
しかし、ゼロボリュームキーワード戦略は違う。
これは「設計」だ。
あなたは:
- ターゲットとなる人物を明確に定義する
- その人が直面している具体的な問題を特定する
- その人がその問題を解決するために「実際に検索するであろう言葉」を予測する
- その検索に完璧に答えるコンテンツを作る
データが示すものを追いかけるのではない。ニーズから逆算して言葉を作り出すのだ。
これは、アーティストが白いキャンバスに絵を描くようなものだ。
既存の絵を真似るのではなく、あなた自身が新しい絵を創造する。
第一の柱:ハイパーローカル・ニーズレイヤリング
概念:地理×ニーズ×シーンの三次元マトリクス
ほとんどのローカルSEO戦略は、こうだ:
「渋谷 カフェ」
「新宿 居酒屋」
しかし、これでは不十分だ。
ハイパーローカル・ニーズレイヤリングは、これを三次元に拡張する。
地理(Where) × ニーズ(What) × 利用シーン(When/Why)
具体例で理解する
通常のローカルキーワード:
「新宿 カフェ」
→ 月間検索数:2,000
→ 競合:大手グルメサイトがひしめく
ハイパーローカル・ニーズレイヤリング:
「新宿三丁目 カフェ 電源 wifi 作業 8時間 土曜日」
→ 月間検索数:0〜10
→ 競合:ほぼなし
違いがわかるだろうか?
後者の検索をする人は:
- 新宿駅ではなく、新宿三丁目駅の近くを探している(より具体的な地理)
- ただ座るだけではなく、作業したい(ニーズ)
- 電源とWi-Fiが必須(制約条件)
- 長時間(8時間)滞在したい(利用シーン)
- 土曜日に利用したい(時間的制約)
この人は、もはや「カフェ探し」をしていない。「作業場所探し」をしている。
そして、このニーズに完璧に答えるページがあれば、彼は即座に来店する。
実践ステップ:あなたの業界でハイパーローカルを設計する
ステップ1:地理的粒度を上げる
市区町村レベルではなく、駅名、町名、ランドマークレベルまで落とし込む。
例(東京でのビジネスホテル):
- NG:「東京 ビジネスホテル」
- OK:「羽田空港 国際線ターミナル 徒歩5分 ビジネスホテル」
例(福岡での貸会議室):
- NG:「福岡 貸会議室」
- OK:「博多駅 筑紫口 貸会議室 プロジェクター 50人収容」
ステップ2:ニーズを具体化する
「何をしたいか」を、可能な限り詳細に。
例(カフェ):
- 一般的なニーズ:「コーヒーを飲みたい」
- 具体的なニーズ:「MacBookで作業しながら、8時間粘りたい」
例(コワーキングスペース):
- 一般的なニーズ:「作業場所がほしい」
- 具体的なニーズ:「Zoom会議ができる個室ブースが必要」
ステップ3:利用シーンを重ねる
「いつ、どんな状況で使うか」を追加する。
例(レンタルスペース):
- 基本:「渋谷 レンタルスペース」
- +利用シーン:「渋谷 レンタルスペース 誕生日会 20名 持ち込み可能 深夜」
例(駐車場):
- 基本:「横浜駅 駐車場」
- +利用シーン:「横浜駅 駐車場 大型車 ハイエース 高さ2.5m 月極」
リアルケーススタディ:大阪の結婚式二次会会場
クライアント: 居酒屋チェーンのオーナー(大阪・難波)
課題: 週末の予約が埋まらない。大手予約サイトでは手数料が高い。
従来のアプローチ:
「難波 居酒屋」で上位表示を目指す
→ 食べログ、ホットペッパーに勝てず、断念
ハイパーローカル・ニーズレイヤリング適用後:
ターゲット顧客の明確化:
- 結婚式の二次会幹事を任された20代後半の会社員
- 新郎新婦の希望:「カジュアルで、でもちゃんとした場所」
- 予算:一人5,000円
- 人数:30〜50名
- 時間:日曜日の18時〜21時
- 場所:難波駅から徒歩5分以内(新郎新婦の利便性)
設計したキーワード:
- 「難波 結婚式二次会 会場 30名〜50名 日曜 立食 カジュアル」
- 「なんば 二次会 貸切 5000円 飲み放題 プロジェクター」
- 「難波駅 徒歩5分 結婚式二次会 幹事代行 不要 直接予約」
結果:
- これらのキーワードでLP(ランディングページ)を作成
- 検索ボリューム:各0〜10
- 3ヶ月後:月4〜6件の二次会予約を獲得
- 客単価:15万円〜25万円(30〜50名 × 5,000円)
- 月間売上:60万円〜150万円
- 競合:実質ゼロ(専門会場は高すぎる、他の居酒屋はこのニッチを狙っていない)
成功の鍵:
- 「居酒屋を探している人」ではなく「二次会会場を探している人」にターゲットを絞った
- 幹事が直面する具体的な悩み(人数の不確定性、予算、場所の利便性)すべてに答えた
- 大手予約サイトでは見つからない、独自の価値提案を明確にした
第二の柱:USPと問題の交差点
概念:あなただけが解決できる、特定の誰かの特殊な問題
USP(Unique Selling Proposition:独自の価値提案)とは、「あなただけが提供できる価値」だ。
そして、最も価値の高いキーワードは、あなたのUSPと、ターゲット顧客の特殊な問題が交差する地点に存在する。
これは方程式のようなものだ:
高価値キーワード = あなたのUSP × 顧客の特殊な問題
実践ステップ:交差点を見つける
ステップ1:あなたのUSPを明文化する
「うちは何が違うのか?」を3つ書き出す。
例(プログラミングスクール):
- 講師全員が現役のフリーランスエンジニア(実務経験豊富)
- 受講生一人ひとりに専属メンターがつく(個別サポート)
- 卒業後の案件獲得まで支援(実践的な営業スキルも教える)
例(経理代行サービス):
- 建築業界専門(業界特有の会計処理に精通)
- クラウド会計ソフトの導入・運用サポート込み(ITが苦手でもOK)
- 月次決算を翌月5営業日以内に提出(スピード重視)
あなたのUSPを3つ書いてください:
- ______________________________
- ______________________________
- ______________________________
ステップ2:ターゲット顧客の「特殊な問題」をリストアップ
あなたのUSPが解決できる、ニッチで具体的な問題を5つ考える。
例(上記のプログラミングスクール):
USP1(現役フリーランス講師)が解決できる問題:
- 「スクールで学んだけど、実際の案件でどう動けばいいかわからない」
- 「クライアントとのコミュニケーションの取り方が不安」
USP2(専属メンター)が解決できる問題:
- 「質問したいことがあっても、誰に聞けばいいかわからない」
- 「進捗が遅れていて、モチベーションが続かない」
USP3(案件獲得支援)が解決できる問題:
- 「スキルは身についたけど、どうやって最初の案件を取ればいいか不明」
- 「ポートフォリオの作り方がわからない」
ステップ3:問題を「検索クエリ」に変換する
上記の問題を、ターゲット顧客が実際に検索しそうな言葉に変える。
例:
-
問題:「実際の案件でどう動けばいいかわからない」
→ 検索クエリ:「プログラミングスクール 卒業後 案件獲得 サポート フリーランス」 -
問題:「クライアントとのコミュニケーション不安」
→ 検索クエリ:「エンジニア フリーランス クライアント 対応 学べる スクール」 -
問題:「最初の案件の取り方が不明」
→ 検索クエリ:「プログラミング 初心者 案件 獲得方法 営業 教えてくれる」
リアルケーススタディ:建築業界特化の経理代行
クライアント: 会計事務所(従業員5名、地方都市)
課題: 一般的な記帳代行は競争が激しく、価格競争に巻き込まれている。
USPの発見:
経営者へのヒアリングで判明したこと:
- スタッフの一人が、前職で建設会社の経理を10年担当していた
- 建築業界特有の会計処理(工事進行基準、完成工事補償引当金など)に詳しい
- 建設業許可の更新に必要な財務諸表の作り方も熟知
ターゲット顧客の特殊な問題の発見:
建築業界の小規模事業者(従業員10名以下)が抱える問題:
- 一般的な税理士は建設業会計を理解していない
- 工事ごとの原価管理ができておらず、利益が見えない
- 建設業許可の更新時期になって、慌てて財務諸表を整える
- クラウド会計ソフトを導入したいが、使い方がわからない
- 現場が忙しくて、経理に時間を割けない
設計したキーワード:
- 「建設業 経理代行 工事原価管理 クラウド会計 導入サポート」
- 「建築業許可 更新 財務諸表 作成 期限 間に合わない」
- 「工務店 一人親方 記帳代行 建設業会計 わかる 税理士」
- 「リフォーム会社 原価管理 Excel できない システム化」
結果:
- ニッチ特化したランディングページを作成
- 検索ボリューム:各0〜30
- 6ヶ月後:月3〜5件の問い合わせ
- 成約率:60%(高い専門性により、信頼獲得が早い)
- 月額契約単価:5万円〜10万円(一般的な記帳代行の2〜3倍)
- 年間売上増加:360万円〜600万円
成功の鍵:
- 「誰でもできる記帳代行」から「建築業界専門」に完全特化
- 業界特有の専門用語を使うことで、ターゲットに「この人はわかってる」と思わせた
- 問題(建設業許可更新の財務諸表)と解決策(専門知識)が完璧に一致
第三の柱:実績あるコンバージョンキーワードの水平展開
概念:一つの成功を10倍にする
これは、最もリスクが低く、再現性の高い方法だ。
すでに実際にコンバージョンを生んだキーワードがある場合、その構造を分析し、一つの変数だけを変えて展開する。
これは、科学実験の「変数統制」と同じ原理だ。
実践ステップ:成功の複製
ステップ1:過去のコンバージョンキーワードを特定する
Google Search ConsoleまたはGoogle Analyticsで、実際にコンバージョンにつながったキーワードを3つ以上見つける。
もし履歴がない場合は、同業他社や類似ビジネスの成功事例を参考にする。
ステップ2:キーワードの構造を分解する
そのキーワードを構成要素に分解する。
例:「税理士 相談 飲食店 開業 渋谷」
構成要素:
- 職種:税理士
- サービス:相談
- 業界:飲食店
- ニーズ:開業
- 地域:渋谷
ステップ3:一つの変数だけを変える
変数A(業界)を変える:
- 「税理士 相談 美容室 開業 渋谷」
- 「税理士 相談 整体院 開業 渋谷」
- 「税理士 相談 ネイルサロン 開業 渋谷」
変数B(ニーズ)を変える:
- 「税理士 相談 飲食店 確定申告 渋谷」
- 「税理士 相談 飲食店 資金繰り 渋谷」
- 「税理士 相談 飲食店 法人化 渋谷」
変数C(地域)を変える:
- 「税理士 相談 飲食店 開業 新宿」
- 「税理士 相談 飲食店 開業 池袋」
- 「税理士 相談 飲食店 開業 品川」
ステップ4:展開後のキーワードで個別ページを作成
単に既存記事のタイトルだけ変えるのではなく、それぞれのキーワードに特化した独立ページを作る。
重要: 各ページは、その変数に特化した独自コンテンツを持つべき。
例えば「美容室 開業」なら:
- 美容室開業に必要な特有の許認可(美容師免許、保健所届出)
- 美容室特有の経理処理(商材の仕入れ、技術料の設定)
- 美容室経営者がよくする税務上のミス
リアルケーススタディ:ペット関連サービスの展開
クライアント: ペット保険の比較サイト運営者
最初の成功:
「トイプードル ペット保険 おすすめ 子犬」というキーワードで月5件の成約
水平展開の実施:
展開軸1:犬種を変える
元:トイプードル
→ 展開:
- 「柴犬 ペット保険 おすすめ 子犬」
- 「チワワ ペット保険 おすすめ 子犬」
- 「ゴールデンレトリバー ペット保険 おすすめ 子犬」
- 「フレンチブルドッグ ペット保険 おすすめ 子犬」
- 「ミニチュアダックスフンド ペット保険 おすすめ 子犬」
各犬種特有の疾患リスク(例:フレンチブルドッグは呼吸器系、ダックスフンドは椎間板ヘルニア)に特化したコンテンツを作成。
展開軸2:ライフステージを変える
元:子犬
→ 展開:
- 「トイプードル ペット保険 おすすめ シニア犬」
- 「トイプードル ペット保険 おすすめ 持病あり」
- 「トイプードル ペット保険 おすすめ 去勢手術後」
展開軸3:猫に展開
元:犬種(トイプードル)
→ 展開:
- 「アメリカンショートヘア 猫 ペット保険 おすすめ」
- 「スコティッシュフォールド 猫 ペット保険 おすすめ」
- 「ラグドール 猫 ペット保険 おすすめ」
結果:
- 6ヶ月で40個の展開記事を作成
- 各記事の検索ボリューム:0〜50
- 全体の月間コンバージョン:5件 → 35件(7倍)
- 月間報酬:5万円 → 35万円
成功の鍵:
- 元のキーワードの「成功の型」を正確に特定した
- 表面的なコピペではなく、各展開先に特化した専門コンテンツを作った
- 犬種ごとの疾患リスクという「深い専門知識」で差別化した
第四の柱:意図シフトキーワード(ずらしワード)
概念:価値観フィルターで市場を分割する
これは、最もクリエイティブで、最も効果的な手法だ。
意図シフトキーワード(ずらしワード)とは、一般的なキーワードに特定の修飾語を加えることで、検索意図を劇的にシフトさせ、ニッチで価値観の合致した層だけをターゲットにする技術だ。
これは、大衆向けスーパーマーケットから、オーガニック専門店に客層を絞り込むようなものだ。
「ずらし」の7つの次元
次元1:価値観ずらし
一般的なキーワードに、特定の価値観を追加する。
例:
- 「ドッグフード」→ 「ドッグフード オーガニック 無添加 国産」
- 「化粧水」→ 「化粧水 動物実験なし ヴィーガン」
- 「コーヒー豆」→ 「コーヒー豆 フェアトレード シングルオリジン」
効果:
価格よりも価値観を重視する層を獲得。彼らは高単価でも購入する。
次元2:時間軸ずらし
「いつ使うか」を限定する。
例:
- 「プロテイン」→ 「プロテイン 寝る前 就寝前 吸収遅い」
- 「英会話」→ 「英会話 早朝 6時 出勤前」
- 「ジム」→ 「ジム 24時間 深夜 3時 営業」
効果:
特定のライフスタイルを持つ人だけを集客。競合が手薄な時間帯を独占。
次元3:制約条件ずらし
「何ができない」「何が苦手」を明示する。
例:
- 「ダイエット」→ 「ダイエット 運動なし 食事だけ」
- 「プログラミング学習」→ 「プログラミング 数学苦手 文系 初心者」
- 「副業」→ 「副業 在宅 顔出しなし 声も出さない」
効果:
「自分には無理」と諦めていた層を発掘。彼らは解決策に飢えている。
次元4:結果の具体化ずらし
漠然とした「良くなる」ではなく、具体的な数値目標を設定。
例:
- 「英語学習」→ 「英語 TOEIC 600→800 3ヶ月」
- 「筋トレ」→ 「筋トレ ベンチプレス 100kg 達成 プログラム」
- 「ブログ」→ 「ブログ 月間1万PV 達成 6ヶ月以内」
効果:
明確な目標を持つ、本気度の高い層だけを集める。
次元5:失敗回避ずらし
「過去の失敗」を明示的に回避する。
例:
- 「オンライン英会話」→ 「オンライン英会話 続かない人向け 3ヶ月保証」
- 「ダイエットサプリ」→ 「ダイエット リバウンドしない 維持方法」
- 「副業」→ 「副業 詐欺じゃない 安全 初期費用なし」
効果:
失敗経験者という「一度市場から離脱した層」を再獲得。
次元6:組み合わせずらし
通常は一緒に語られない二つの要素を組み合わせる。
例:
- 「筋トレ × ヴィーガン」→ 「筋トレ ヴィーガン プロテイン 植物性」
- 「ミニマリスト × 子育て」→ 「ミニマリスト 子供3人 持ち物リスト」
- 「キャンプ × バイク」→ 「バイク キャンプ 積載 工夫 ソロ」
効果:
複数のニッチが交差する「超ニッチ」を独占。
次元7:逆張りずらし
常識の「逆」を提示する。
例:
- 「英語学習」→ 「英語 文法 勉強しない 話せる方法」
- 「SEO」→ 「SEO 被リンク営業なし 記事だけで上位表示」
- 「起業」→ 「起業 資金ゼロ 借金なし 自宅で開始」
効果:
常識に疑問を持つ、既存の方法に不満を持つ層を獲得。
リアルケーススタディ:猫用品アフィリエイトの「ずらし」
アフィリエイター: 田村さん(仮名)、猫を3匹飼う愛猫家
初期の失敗:
「キャットフード おすすめ」で記事を書くも、大手サイトに勝てず。月の収益500円。
「ずらし」の適用:
田村さんは、自分の猫が持つ特殊なニーズに気づいた:
- 1匹目:腎臓が弱く、療法食が必要
- 2匹目:食物アレルギーがあり、特定のタンパク質を避ける必要
- 3匹目:超偏食で、ほとんどのフードを食べない
設計した「ずらしキーワード」:
ずらし1:病気×価値観
- 「キャットフード 腎臓病 療法食 食いつき良い おいしい」
- 「猫 腎臓病 療法食 食べない 困った 解決」
→ 一般的な療法食は「栄養」だけを重視。「おいしさ」を求める飼い主はニッチ。
ずらし2:アレルギー×原材料限定
- 「キャットフード アレルギー 魚不使用 チキンのみ」
- 「猫 アレルギー フード グレインフリー 単一タンパク」
→ アレルギー対応フードは多いが、特定タンパク源限定はさらにニッチ。
ずらし3:偏食×最後の手段
- 「猫 偏食 何も食べない 最終手段」
- 「猫 フード 食べない 強制給餌 避けたい 方法」
→ 「困り果てた飼い主」という、非常に切迫した層。
結果:
- 各キーワードで専門性の高い記事を作成(自身の経験に基づく)
- 検索ボリューム:各0〜100
- 6ヶ月後の月間収益:500円 → 8万円(160倍)
- 特に「腎臓病 療法食 食いつき良い」の記事が、月3万円を生むヒット記事に
成功の鍵:
- 自分自身が当事者であり、その切実さを理解していた
- 「ずらし」により、大手ペットフードメーカーのサイトと競合しない領域を開拓
- 単なる商品紹介ではなく、「同じ悩みを持つ飼い主」としての共感を生んだ
4つの柱の統合:最強のキーワードを設計する
ここまで、4つの柱を個別に学んできた。
しかし、真の威力は、これらを組み合わせることで発揮される。
統合の実例:コワーキングスペース
柱1(ハイパーローカル)を適用:
「渋谷 コワーキングスペース」
柱2(USP×問題)を適用:
「渋谷 コワーキングスペース 個室ブース Zoom会議」
(USP:完全個室ブースあり、問題:Zoom会議で周囲に迷惑をかけたくない)
柱4(ずらし)を適用:
「渋谷 コワーキングスペース 個室ブース Zoom会議 24時間 深夜利用可能」
(時間軸ずらし:深夜働く人をターゲット)
柱3(水平展開)で増やす:
- 地域を変える:「新宿」「池袋」「品川」
- ニーズを変える:「Zoom会議」→「電話対応」「録音」「配信」
最終的に生まれるキーワード群:
- 「渋谷 コワーキング 個室 Zoom 24時間」(月間検索数:0)
- 「新宿 コワーキング 個室 電話対応 深夜」(月間検索数:0)
- 「品川 コワーキング 個室 録音 防音」(月間検索数:0)
これらのキーワードで検索する人の価値:
- 緊急性:高い(今すぐ使える場所を探している)
- 具体性:極めて高い(条件が明確)
- 支払い意思:高い(時間単価が高い仕事をしている可能性)
- 競合:ほぼいない
予想CVR:20〜40%
上級テクニック:顧客言語マイニング
4つの柱をマスターしたあなたに、最後の秘密兵器を教える。
顧客言語マイニング—これは、ゼロボリュームキーワード発見の最も直接的で、最も信頼性の高い方法だ。
なぜ顧客の言葉が最強なのか?
あなたがどれだけ賢くても、あなたは「予測」している。
しかし、顧客の口から出る言葉は「事実」だ。
彼らは実際にその言葉で検索し、あなたのサービスにたどり着いた。あるいは、たどり着けなかった。
この「生の言葉」こそが、最も価値の高いキーワードの宝庫だ。
顧客言語マイニングの5つの情報源
情報源1:営業・商談ログ
営業担当者が記録した、顧客との会話記録を読み込む。
着目ポイント:
- 顧客が最初に相談してきた「きっかけ」
- 顧客が使う業界用語や独特の表現
- 顧客が困っていることを説明するときの言い回し
実例:
営業ログ:「お客様は『Excelでの工事原価管理が限界に来ている』とおっしゃっていました」
→ キーワード:「工事原価管理 Excel 限界 システム化」
情報源2:カスタマーサポートのチケット
問い合わせやクレームの記録。ここには、顧客の「リアルな困りごと」が生々しく記録されている。
実例:
サポートチケット:「○○機能を使おうとしたら、エラーが出ます。△△という業務フローで使いたいのですが、どうすればいいですか?」
→ キーワード:「○○機能 △△業務フロー エラー 解決方法」
情報源3:顧客への直接ヒアリング
これが最強だ。実際の顧客に、以下の質問をする:
- 「最初、どんな言葉で検索しましたか?」
- 「他にどんな検索をしましたか?」
- 「その検索結果に、あなたの求めている答えはありましたか?」
- 「最終的に、どうやって私たちを見つけましたか?」
実例:
顧客の回答:「最初は『建設業 経理ソフト』で検索したんですが、大手の汎用ソフトばかりで。次に『建設業 工事台帳 ソフト』で検索して、でもピンと来なくて。最後に『一人親方 確定申告 やってくれる 税理士』で検索して、御社を見つけました」
→ 3つのキーワード候補を一度に獲得
情報源4:SNSやレビューサイトでの言及
TwitterやInstagram、Google レビューなどで、あなたの業界について言及している投稿を探す。
実例:
Twitter投稿:「渋谷でMacBook広げて作業できるカフェ、どこかないかな。電源とWi-Fiがあって、8時間くらい粘っても怒られないところ😭」
→ キーワード:「渋谷 カフェ MacBook 作業 電源 wifi 長時間」
情報源5:競合他社のレビュー(特にネガティブなもの)
競合のGoogle レビューやAmazonレビューの★1〜2を読む。
着目ポイント:
「○○が不満だった」という記述 = 市場にある未解決のニーズ
実例:
競合ジムのレビュー:「マシンの待ち時間が長すぎる。もっと空いているジムを探します」
→ キーワード:「ジム 空いている 待ち時間なし 渋谷」
顧客言語マイニング・ワークシート
今すぐやること:
- 過去の営業ログ・メールを10件読む(60分)
- 「お客様の悩み」「使っていた言葉」をメモ
- 最低10個のフレーズを抽出
- 既存顧客1人に電話またはメールする(30分)
- 「最初、何て検索しましたか?」と聞く
- そのまま書き起こす(あなたの言葉に変換しない)
- あなたの業界のTwitter検索(30分)
- 「○○ 困った」「○○ どこ」「○○ ない」などで検索
- 実際の悩みをツイートしている人の言葉をメモ
- 競合のGoogle レビューを20件読む(30分)
- ★1〜2のレビューに着目
- 「不満」を「あなたのUSP」に変換できないか考える
この2時間半の作業で、あなたは20〜30個の「誰も気づいていないキーワード」を手に入れる。
第3章のまとめ:あなたが手に入れた武器
この章で、あなたは以下の4つの柱と上級テクニックをマスターした:
- ハイパーローカル・ニーズレイヤリング:地理×ニーズ×シーンの三次元設計
- USPと問題の交差点:あなただけが解決できる特殊な問題を言語化
- 実績あるキーワードの水平展開:一つの成功を10倍に増やす科学的手法
- 意図シフトキーワード(ずらしワード):価値観フィルターで市場を分割
- 顧客言語マイニング:最も確実な情報源から直接キーワードを抽出
そして、最も重要なこと:
キーワードは「見つける」ものではなく「設計する」ものだ。
あなたは今、誰もいない金鉱脈の地図を持っている。
次章への招待:金を掘り出す
「キーワードは見つかった。じゃあ、どうやって記事を書くんだ?」
そう思っているはずだ。
次の第4章では、「たった1本で月50万円を生む記事の作り方」に入る。
あなたは「デスティネーション・コンテンツ」の設計方法を学ぶ。
これは、読者の旅を完璧に終わらせる、完全な答えを提供する記事だ。
そして、E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)を最大化し、Googleに「この記事こそが最高の答えだ」と認めさせる技術を手に入れる。
次の章を読み終える頃には、あなたは「スナイパー」になっている。
100本の凡庸な記事を量産する人ではなく、1本の完璧な記事で市場を支配する人に。
準備はいいか?
さあ、ペンを持て。
書く時間だ。
第3章 完
この章を最大限に活用するための行動課題
今すぐやるべきこと:
- 4つの柱から、それぞれ5個ずつキーワードを設計する(120分)
- 合計20個のキーワード候補を作る
- ツールで検索ボリュームを確認する(でも、0でも気にしない)
- 顧客言語マイニングを実践する(150分)
- 上記のワークシートに従って、実際に情報源を探る
- 最低20個の「生の言葉」を集める
- 集めた40個のキーワードから、トップ5を選ぶ(30分)
- 基準:「失敗コストが最も高い」「あなたのUSPに最も合致する」「切迫性が最も高い」
- この5つが、あなたの最初のターゲットだ
- トップ5について、検索者のペルソナを書く(60分)
- 各キーワードについて:
- この検索をする人は、今どんな状況にいるか?
- 彼らは何を恐れているか?
- 彼らは何を求めているか?
- この検索の「次の行動」は何か?
- 実際にGoogleでそのキーワードを検索し、競合を分析する(30分)
- トップ10の検索結果を見る
- 「完璧な答え」を提供しているページはあるか?
- あなたなら、どう改善できるか?
この6時間の作業で、あなたは「次に書くべき5本の記事」の完璧な設計図を手に入れる。
行動しない者に、金鉱は掘れない。
さあ、今すぐ始めろ。
あなたの金脈は、あなたの顧客の口の中に眠っている。
コメント