10年探して見つからない?当たり前だ。あなたの「本当の自分」は存在しない
インドに行けば自分が見つかる—この世で最もコスパの悪い勘違い
ミサキは28歳。
「本当の自分を見つけたい」
そう言って、会社を辞めた。そしてバックパック1つで、インドへ。
3ヶ月後、帰国したミサキに友人が聞いた。「どうだった?本当の自分、見つかった?」
ミサキは遠い目をして言った。「うん…腹は壊したけどね」
お前が見つけたのは、本当の自分じゃない。ガンジス川の大腸菌だ。
自分探しという名の、最も壮大な時間の無駄
ここで問おう。
「本当の自分」って何だ?
魂のどこかに刻まれているのか?DNAに書かれているのか?インドのどこかに落ちているのか?
違う。
そんなもの、最初から存在しない。
しかし毎年、何万人もの日本人が「自分探し」に旅立つ。
インド。ネパール。バリ。南米。
そして帰国後、必ず言う。
「まだ見つからなかった」
当たり前だ。お前が探しているのは、ネッシーだ。存在しないものを探している。
自分探しコースの定番ルート
自分探し族には、お決まりのルートがある。
Level 1: インド(初心者コース)
- ヨガ
- 瞑想
- ガンジス川で沐浴
- 腹を壊す
- 「何か掴んだ気がする」
- 帰国後、2週間で元に戻る
Level 2: バリ(中級者コース)
- スピリチュアルセミナー
- 「宇宙の法則」を学ぶ
- パワーストーンを5万円で買う
- ココナッツ10杯飲む
- 「今度こそ!」
- 帰国後、1ヶ月で元に戻る
Level 3: 世界一周(上級者コース)
- 1年かけて30カ国
- Instagram映え300枚
- 「人生観が変わった」
- 貯金ゼロ
- 帰国後、実家に戻る
- そして気づく。「あれ?まだ見つかってない」
Level MAX: 自己啓発セミナー(課金地獄コース)
- セミナー代50万円
- 「あなたの中に答えがあります」(だったら50万円返せ)
- 隣の参加者と抱き合って泣く
- 「変わった気がする」
- 帰宅後、冷蔵庫を開けて現実に戻る
宝探しの地図を持って砂漠を彷徨う男
想像してほしい。
砂漠に、一人の男がいる。手には宝の地図。
「X印の場所に、宝が埋まっている」
男は歩く。1年。2年。3年。
X印の場所に着いた。掘る。
何もない。
「おかしい…地図が間違っているのか?」
新しい地図を買う。また歩く。
5年。10年。
まだ見つからない。
そりゃそうだ。宝は最初から埋まっていない。
地図を売った詐欺師が笑っている。「また買ってくれた。ありがとう」
その横で、陶芸家が壺を焼いている
同じ砂漠。
別の男がいる。
彼は地図を捨てた。宝探しをやめた。
代わりに粘土をこねている。
「宝を探すのやめた。自分で作る」
最初は下手な壺。ゆがんでいる。しかし毎日作る。
10年後。
宝探しの男は、まだ砂漠を彷徨っている。「本当の宝は、絶対にどこかにあるはずだ!」
陶芸家の周りには、100個の壺がある。完璧じゃない。でも彼が作った。
宝を探す人は、人生を探す。壺を作る人は、人生を作る。
「本当の自分」症候群の症状
以下の症状に心当たりはないか?
□ 「本当の自分はこんなはずじゃない」が口癖□ 遠くに行けば見つかると信じている□ 「今の自分」が仮の状態だと思っている□ 「本当の自分が見つかったら本気出す」□ 自己啓発本の「あなたの中に答えがある」を信じている□ インドに行けば悟れると思っている□ 「まだ見つかってない」と10年言い続けている
3つ以上該当したら、お前は「本当の自分」症候群だ。
治療法は1つ。
探すのをやめろ。
ミサキと母親の会話—真実は実家にあった
5年間、世界中を旅したミサキ。
貯金は底をついた。しかし「本当の自分」は見つからない。
仕方なく実家に戻った。
母親がコタツでみかんを食べていた。
「おかえり。お腹空いたでしょ?」
ミサキは泣きそうになった。5年ぶりの、母親の味噌汁。
「ミサキ、まだ探してるの?」
「うん…まだ見つからない」
母親はみかんの皮をむきながら、サラッと言った。
「あのね、お母さんね、『本当の自分』なんて探したことないのよ」
「え?」
「お母さんはね、毎日ご飯作って、お父さんの文句聞いて、あなたを育てて」
「で、気づいたらこれが『自分』だったのよ」
ミサキは絶句した。
「探すんじゃなくて、作るのよ。毎日の選択で」
母親、強い。
母親の追撃は続く
「それにね、インド行って腹壊して、バリでココナッツ飲んで、それで自分が見つかるなら、世の中の主婦はみんなインド行ってるわよ」
ミサキ、返す言葉なし。
「お母さんね、スーパーで大根買うときも自分作ってるの。『今日は大根にしよう』って選んだ自分が、お母さんなの」
深い。コタツの上のみかんより深い。
「あなたね、『本当の自分』って言うけど、今のあなたも本当のあなたよ」
「でも…」
「28歳。貯金ゼロ。実家に戻ってコタツでみかん食べてる。それが今のあなた」
母親、容赦ない。
「でもね、明日のあなたは、今日の選択で変わるのよ」
その瞬間、ミサキの目から涙が出た。
5年間、世界中で探した答えが、コタツの上にあった。
「自分は粘土である」理論
ここで真実を語る。
自分は宝じゃない。自分は粘土だ。
最初は形のない粘土。
それを毎日、手でこねる。少しずつ形ができる。
「今日は、この形にしよう」「明日は、もう少しこっちの形にしよう」
1年後、小さな壺ができる。完璧じゃない。少しゆがんでいる。
でもそれが「あなた」だ。
「自分」の作り方
難しくない。
Step 1: 今の自分を受け入れる
28歳。貯金ゼロ。実家のコタツ。
これが今の自分だ。否定するな。受け入れろ。
完璧じゃない?当たり前だ。粘土は最初、形がない。
Step 2: 今日、1つ選択する
「明日の自分は、何をする自分にするか?」
- 早起きする自分
- 運動する自分
- 本を読む自分
- 誰かに親切にする自分
- 何でもいい
1つ選べ。
Step 3: その選択を実行する
選んだら、やれ。
早起きすると決めたなら、明日6時に起きろ。運動すると決めたなら、明日走れ。
これが粘土をこねる行為だ。
Step 4: 繰り返す
明日も。明後日も。1年後も。
気づけば、粘土に形ができている。
それが「あなた」だ。
2年後のミサキ—粘土が壺になった
2年後。
ミサキは小さなカフェを経営していた。
友人が訪ねてきた。
「ミサキ!本当の自分、見つかったの?」
ミサキはコーヒーを淹れながら笑った。
「見つかったんじゃない。作ったんだよ」
「は?」
「あのね、2年前に気づいたの。自分は宝じゃなくて、粘土だって」
「粘土?」
「うん。最初は形がない。でも毎日こねてたら、少しずつ形ができるの」
友人は聞いた。
「で、今の自分は?」
「今の自分は、コーヒー淹れてる自分。完璧じゃないけど、私が作った」
「それで十分」
カフェの名前は「Clayworks」
友人が店の看板を見た。
「Clayworks?粘土細工?」
ミサキは笑った。
「そう。自分も粘土細工みたいなもんだから」
「毎日こねて、少しずつ形作る」
「それが人生だって、コタツで気づいたの」
友人は黙って、コーヒーを飲んだ。
そして言った。
「…私もインド行こうと思ってたんだけど」
ミサキは即答した。
「やめとけ。腹壊すだけだ」
インド vs コタツ—どっちに答えがあるか
ここで比較しよう。
インドで得られるもの:
- 腹痛
- 下痢
- Instagram映え
- 「何か掴んだ気がする」幻想
- 50万円の出費
- 帰国後2週間で消える感動
コタツで得られるもの:
- 母親の味噌汁
- みかん
- 現実
- 「探すな、作れ」という真理
- 0円
- 一生使える知恵
圧勝:コタツ
自分探しセミナー詐欺の手口
ついでに暴露しておく。
自己啓発セミナーの常套句:
「あなたの中に、答えがあります」
(だったら50万円返せ)
「本当のあなたを見つけましょう」
(最初から存在しないものを探させるな)
「あなたは無限の可能性を持っています」
(でもセミナー代は有限に払わせる)
「信じれば、叶います」
(信じたら、財布が軽くなります)
セミナーの流れ
- 参加者を円になって座らせる
- 「あなたの夢は?」と聞く
- 隣の人と抱き合って泣く
- 「変わった気がする!」
- 帰宅
- 冷蔵庫を開けて現実に戻る
- 「次のセミナーに行けば…」
- ループ
これは自分探しではない。財布の中身が消える現象だ。
自分は「作品」ではない。「プロセス」だ
ここで重要なことを言う。
自分は完成しない。
「本当の自分」という完成品を探すから、見つからない。
自分は「プロセス」だ。
今日の選択。明日の行動。その積み重ね。
それがずっと続く。
70歳になっても、自分は変わり続ける。80歳になっても、まだ作り続けている。
完成品を探すな。プロセスを楽しめ。
村上春樹も最初は「本当の自分」など知らなかった
村上春樹。世界的作家。
しかし29歳まで、ジャズバーを経営していた。
「本当の自分を見つけたい」と悩んでいたか?
否。
ある日、突然思った。「小説、書いてみるか」
それだけ。
40年後、ノーベル賞候補。
自分は見つけるものではない。作るものだ。
お前に告ぐ—今日、粘土をこね始めろ
さあ、お前の番だ。
まだインドに行くのか?まだセミナーに50万円払うのか?まだ「本当の自分」を探すのか?
いい加減、気づけ。
宝は埋まっていない。ネッシーは存在しない。本当の自分は、最初からいない。
しかし粘土はある。
今の自分という、形のない粘土。
それをこねろ。毎日こねろ。
1年後、小さな壺ができる。完璧じゃない。少しゆがんでいる。
でもそれが「あなた」だ。
今日の選択が、明日の自分を作る
難しくない。
今日、1つ選べ。
「明日の自分は、何をする自分にするか?」
- 早起きする
- 本を読む
- 運動する
- 誰かに親切にする
- 新しいことを始める
何でもいい。
ただ1つ選んで、明日実行しろ。
それが粘土をこねる行為だ。
10年後、お前はどこにいる?
10年後を想像しろ。
パターンA: まだ探している人
「まだ見つからない…」
インド5回。バリ3回。セミナー代300万円。
貯金ゼロ。そしてまだ探している。
「次こそ、ペルーに行けば…」
パターンB: 作り続けた人
10年前、粘土をこね始めた。毎日、少しずつ。
今、あなたの周りには作品がある。
完璧じゃない。でもあなたが作った。
そして気づく。
「これが自分だったんだ」
エピローグ—実家のコタツには、真理があった
5年後。
ミサキのカフェは、2店舗になっていた。
実家に帰った。
母親はコタツでみかんを食べていた。
「お母さん、5年前にありがとう」
「何が?」
「『探すな、作れ』って教えてくれたこと」
母親は笑った。
「あら、そんなこと言ったっけ?」
ミサキは笑った。
母親は続けた。
「でもね、お母さんもね、毎日自分作ってるのよ」
「今日もスーパーで大根買ってね」
「『今日は大根にしよう』って選んだお母さんが、今日のお母さんなの」
ミサキは思った。
母親、やっぱり強い。
そして理解した。
人生は選択の連続だ。大根を選ぶのも。コーヒー豆を選ぶのも。全部「自分を作る」行為だ。
インドに答えはなかった。実家のコタツにあった。
最後に—探すな、こねろ
お前に告ぐ。
「本当の自分」を探すな。
それは幻想だ。ネッシーだ。存在しない。
しかし粘土はある。
今の自分という、形のない粘土。
今日、それをこね始めろ。
完璧な壺を作る必要はない。ゆがんでいてもいい。
ただこね続けろ。毎日こね続けろ。
10年後。
お前の周りには、100個の壺がある。
完璧じゃない。でもお前が作った。
そしてお前は言う。
「これが俺だ」
探すな。作れ。
宝を探すな。壺をこねろ。
インドに行くな。コタツでみかん食べろ。
そして気づけ。
自分は、いつもそこにあった。
付録: 今日から始める「自分作り」
今日やること:
- 「今の自分」を受け入れる(完璧じゃなくてOK)
- 明日の自分を1つ選ぶ(小さなことでOK)
- 明日、それを実行する
やらないこと:
- インドに行く
- 50万円のセミナーに行く
- 「本当の自分」を探す
これだけだ。
P.S. インドについて
念のため言っておく。
インドは素晴らしい国だ。カレーは美味い。文化は深い。歴史は古い。
しかし「本当の自分」は売っていない。
インドに行くなら、観光で行け。自分探しで行くな。
腹を壊すだけだ。
P.P.S. 母親の知恵
世界中の自己啓発本より、母親の一言の方が真理を突いている。
「探すな、作れ」
これに勝る自己啓発はない。
母親、最強。
さあ、粘土をこねろ。お前の壺を作れ。インドには行くな。
お前の人生は、今日から始まる。
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