「成功したのに虚しい」のはなぜ?年収3000万円で“すべてを失った”男の告白

※今回、当然、フィクション記事。

前回 「夫(妻)の様子がおかしい」…。大切な人が”怪しいビジネス”に囚われた家族の記録と、自分と子供を守る「境界線」

頂上は、誰もいない場所だった – 成功者という名の囚人

年収3000万円。

銀行の残高を見るたび、数字が増えていく。

タワーマンションの最上階。窓から見下ろす夜景。

外車。ブランドスーツ。ロレックス。

SNSのフォロワーは15万人。投稿すれば、「憧れます!」「私もそうなりたい!」のコメントが溢れる。

月に一度、大きなホールを貸し切り、300人の前で壇上に立つ。

「皆さんも、絶対にできます!私がその証明です!」

スポットライトが眩しい。拍手が鳴り止まない。

これが、成功だ。

私は、勝った。


しかし。

誰も知らない。

その夜、私がホテルの一室で、胃薬を4錠飲んでいることを。

翌朝、鏡を見て、「今日も頑張ろう」ではなく「今日も演じよう」と呟いていることを。

妻が、もう3ヶ月も私と目を合わせていないことを。

高校生の息子が、「父親の職業」の欄に「会社員」と嘘を書いていることを。

友人の電話番号を、1つも思い出せないことを。

そして、ここから降りる方法が分からないことを。


私の名前は、田中健太郎(仮名)。43歳。

私は、「Infinite Success Network」というMえるM組織のダイヤモンド・エグゼクティブ。トップ0.5%のランクだ。

私は、このビジネスで成功した。本当に成功した。

嘘じゃない。年収3000万円は、実際に私の口座に入っている。

私は、あなたがSNSで見る「胡散臭い成功者」ではない。

私は、本物だ。

だから、私の話には価値がある。

なぜなら、「成功した側」の地獄は、誰も語らないから。

今日、私はその沈黙を破る。

登りの階段 – 何を犠牲にしたか、まだ気づいていなかった

5年前、私は年収450万円の平凡なサラリーマンだった。

妻と、2人の子供。小さな一軒家。年に一度の家族旅行。

不満はあった。給料は上がらない。上司はバカだ。将来が見えない。

しかし、不幸ではなかった。

そんな時、大学時代の後輩から連絡が来た。

「田中さん、すごいビジネスがあるんです。話だけでも…」

最初は断った。しかし、彼は食い下がった。

そして、私は説明会に行った。

最初の成功体験

私は、他の人より「才能」があった。

話すのが上手かった。人を説得するのが得意だった。数字に強かった。

最初の3ヶ月で、5人を勧誘した。

他の新人が1人勧誘するのに苦戦している中、私は5人だ。

上位ランクの人々が、私に注目し始めた。

「田中さん、才能あるね」
「君は、トップに行ける」
「特別な存在だよ」

この言葉が、麻薬だった。

会社では、誰も私を「特別」だとは言わなかった。

しかし、ここでは違う。私は「選ばれた人間」だった。

最初の10万円

4ヶ月目、私の口座に初めて報酬が振り込まれた。

10万円。

私が勧誘した人々の会費と商品購入から、私への手数料。

この10万円が、会社の給料より輝いて見えた。

なぜなら、これは「自分の力で稼いだ金」だと感じたから。

妻に見せた。

「ほら、10万円入った!」

妻は複雑な顔をした。

「…良かったね。でも、そろそろやめたら?」

「なんで?うまくいってるのに」

「なんか、怖いの。あなた、最近変わってきてる」

しかし、私は聞かなかった。

10万円が、妻の懸念より大きく見えた。

最初の100万円

1年後、私の月収は100万円を超えた。

会社の給料の倍以上。

私は、決断した。

会社を辞める。

妻は反対した。親も反対した。

「せめてもう少し様子を見たら…」
「安定した収入を捨てるのか…」

しかし、私は言った。

「もう決めた。俺は、成功する」

そして、退職届を出した。

その日の夜、初めて自分の決断に震えが来た。

「もし、失敗したら?」

しかし、翌日には、その不安を押し殺した。

なぜなら、不安を見せたら負けだから。

頂上への道 – 何を失ったか、まだ数えていなかった

そこから、私の人生は加速した。

友人の消失

最初に失ったのは、友人だった。

大学時代の親友、太郎に連絡した。

「久しぶり!ちょっと会わない?」

カフェで再会。最初は昔話。

そして、私は切り出した。

「実はさ、すごいビジネス始めてて…」

太郎の顔が、一瞬凍った。

「…ああ、そういう話?」

「話だけでも!」

「健太郎、お前、そういうのにハマったのか…」

「ハマったとかじゃなくて、俺、実際に稼いでるんだよ!月100万円以上!」

太郎は、ため息をついた。

「そうか。でも、俺はいいや」

「なんで?」

「健太郎、お前、今の自分の目、見たことある?」

「…どういう意味?」

「前のお前じゃない。なんていうか…怖いんだよ、その目」

その日を境に、太郎とは連絡が取れなくなった。

同じことが、他の友人たちにも起きた。

誘うたびに、一人、また一人と消えていった。

そして気づいたとき、私の連絡先に残っていたのは、全員がMLMの関係者だった。

妻の距離

そして、妻。

最初の1年は、まだ会話があった。

「今日、どうだった?」
「3人と面談して、1人から前向きな返事もらった」
「そう…」

しかし、2年目から、会話が減った。

私がセミナーに行く日が増えた。週末も、平日の夜も。

「今日、また出かけるの?」
「うん、大事なミーティングがあるんだ」
「…」

そして、あるとき。

「ねえ、最後に家族で出かけたの、いつだっけ?」

私は、思い出せなかった。

「…ちょっと、今忙しい時期でさ。落ち着いたら」

「もう1年半、そう言ってる」

「分かってる。でも、今が踏ん張りどころなんだ。今頑張れば、将来もっと家族との時間が…」

「将来じゃなくて、今が欲しいの」

妻の目に、涙があった。

しかし、私はその涙の意味を理解できなかった。

いや、理解したくなかった。

なぜなら、理解したら、立ち止まってしまうから。

息子の沈黙

そして、息子。

彼が中学2年生のとき、参観日があった。

私は、久しぶりに参加した。

廊下で、他の保護者と話した。

「お父さん、お仕事は何を?」

「自分でビジネスをやってます」

「へえ、どんな?」

私が説明し始めた瞬間、その人の顔が変わった。

「…ああ、そういう…」

そして、さりげなく距離を置いた。

帰り道、息子が言った。

「もう、学校来ないで」

「え?」

「お父さんが来ると、僕、変な目で見られる」

「何言ってるんだ」

「分かってないのはお父さんだけだよ。みんな知ってる。お父さん、変なビジネスやってるって」

息子が、私を恥じていた。

その夜、私は一人で酒を飲んだ。

しかし、翌朝には、その痛みを「嫉妬」に変換した。

「息子は、まだ成功を理解できないだけだ。いつか分かる」

理解できないのは、息子ではなく、私だった。

頂上という名の孤独 – 周りには人がいるのに、誰もいない

そして、3年目。

私は、ダイヤモンド・エグゼクティブに昇格した。

組織の頂点。0.5%の人間だけが到達するランク。

年収3000万円。

セレモニーの夜

昇格セレモニーは、豪華だった。

1000人が集まる大ホール。私の名前が呼ばれ、壇上へ。

スポットライトが私を照らす。

トロフィーが手渡される。

拍手が鳴り止まない。

「田中さん、おめでとうございます!」
「憧れです!」
「私も絶対、そこに行きます!」

私は、英雄だった。

しかし。

セレモニーが終わり、一人でホテルの部屋に戻った。

鏡を見た。

スーツを脱いだ。

ベッドに座った。

そして、気づいた。

誰も、いない。

妻は、家にいる。しかし、彼女の心は、もう私から離れている。
息子は、部屋にいる。しかし、彼は私を見ていない。
友人は、いない。全員、去った。

1000人が祝福してくれたのに、たった一人の「本当の友人」もいない。

電話をかけられる人

試しに、スマホの連絡先を見た。

「もし、今、俺が本当に辛くて、誰かに電話をかけるとしたら、誰にかけられるか?」

連絡先は300人以上ある。

しかし、スクロールしながら気づく。

全員が、ビジネスの関係者だ。

上位ランクの人々 – 彼らは私を「戦力」として見ている。
同ランクの人々 – 彼らは私を「ライバル」として見ている。
下位ランクの人々 – 彼らは私を「目標」「憧れ」として見ている。

誰も、「田中健太郎」という人間を見ていない。

私は、「ダイヤモンド・エグゼクティブ」というラベルだ。

そのラベルを剥がしたら、残るのは何だ?

深夜の胃痛

その夜、激しい胃痛に襲われた。

冷や汗が出る。吐き気がする。

救急車を呼ぼうかと思った。

しかし、思いとどまった。

「成功者が、救急車で運ばれる」という絵面が怖かった。

イメージが壊れる。弱みを見せられない。

だから、薬局で買った胃薬を飲んだ。

それから、毎晩胃薬を飲むようになった。

演じ続ける疲労 – 本当の自分が、どこにあったか分からない

そして、最も恐ろしいことに気づいた。

私は、誰だ?

朝のルーティン

朝、目が覚める。

まず、スマホを見る。SNSのチェック。

私の投稿に、何人が「いいね」を押したか。

昨日の投稿:「朝5時起き。成功者は朝が早い!今日も最高の1日に!」

実際は、胃痛で3時に目が覚めた。そして、薬を飲んで、二度寝した。起きたのは8時。

しかし、投稿は「5時起き」。

嘘だ。

次の投稿:「愛する家族と朝食。幸せな時間!」の写真。

実際は、妻とは2週間まともに会話していない。息子は私を避けている。

写真は、1ヶ月前の、年に一度の「家族写真」を使い回した。

嘘だ。

次の投稿:「読書は成功者の習慣。今月はもう10冊読んだ!」

実際は、表紙をInstagramに上げるために買っただけ。読んでいない。

嘘だ。

鏡の前で、スーツを着る。

笑顔を作る。練習する。

「皆さん、おはようございます!今日も最高ですね!」

この笑顔は、作り物だ。

この声は、演技だ。

では、本当の私は、どこにいる?

セミナーという舞台

月に一度の大型セミナー。

私は、メインスピーカーだ。

「皆さん、私も最初は皆さんと同じでした!」

嘘だ。

私は最初から、他の人より能力があった。だから成功した。

「誰でもできます!」

嘘だ。

99%の人は失敗する。統計が証明している。

「私を信じて、ついてきてください!」

なぜ私を信じる?私は、あなたを知らない。

しかし、私は笑顔で言い続ける。

そして、セミナーが終わった後。

控え室で、一人になる。

スーツを脱ぐ。

顔の筋肉が、痙攣する。2時間、笑顔を作り続けた代償だ。

これは、仕事ではない。演劇だ。

そして、演劇が終わった瞬間、私は誰だ?

降りられない理由 – 檻は、金で作られている

ある日、ふと思った。

「やめたら、どうなるだろう?」

経済的な罠

年収3000万円。

しかし、支出も3000万円だ。

タワーマンションの家賃:月120万円
外車のローン:月30万円
高級スーツ、時計、アクセサリー:月50万円
セミナー会場のレンタル費:月80万円
交際費(食事、旅行、プレゼント):月100万円

「成功者」を演じるための費用が、収入のほとんどを食っている。

もしやめたら?

収入はゼロになる。しかし、支出は変わらない。

いや、変えられない。

なぜなら、「成功者のイメージ」を維持しなければ、誰も私についてこないから。

もし私が普通のマンションに住んだら?
もし私が大衆車に乗ったら?
もし私がユニクロを着たら?

下位ランクの人々は、こう思うだろう。

「あれ?田中さん、落ちぶれた?」
「やっぱり、このビジネス、ダメなんじゃ…?」

私の生活レベルが、彼らの希望の証明になっている。

だから、私は生活レベルを下げられない。

つまり、私は自分の「成功」に囚われている。

アイデンティティの罠

もう一つ、恐ろしいことがある。

もしやめたら、私は何者だ?

会社員だったのは、5年前。
その時のスキルは、もう時代遅れ。
43歳で、ゼロからやり直せるか?

履歴書に何と書く?

「過去5年間、MLMで年収3000万円稼いでいました」

こんな履歴書、どこが採用する?

私は、もう普通の社会に戻れない。

そして、それ以上に恐ろしいのが。

「田中健太郎」というアイデンティティが、もう存在しないこと。

私は、「ダイヤモンド・エグゼクティブの田中」だ。

そのラベルを剥がしたら、何が残る?

5年前の自分か?

しかし、もう思い出せない。5年前の私は、何が好きで、何を考えていたか。

私は、役を演じているうちに、本体が消えた。

罪悪感という鎖

そして、最も重い鎖。

私が勧誘した人々。

私の下には、200人以上のダウンラインがいる。

彼らの多くは、稼げていない。赤字だ。

しかし、彼らは私を信じている。

「田中さんのようになりたい」
「田中さんについていけば、大丈夫」

もし私がやめたら?

彼らは、どう思う?

「やっぱり、騙されたのか…」
「田中さん、俺たちを見捨てるのか…」

私は、彼らを裏切れない。

いや、正確には。

私は、自分が「裏切り者」になることに耐えられない。

だから、続けるしかない。

ある夜の崩壊 – 仮面が、ひび割れた

そして、転機が来た。

娘の涙

ある日、大学生の娘が帰省した。

彼女は、もう3年間、私とほとんど口を利いていなかった。

その夜、リビングで珍しく3人揃った。私、妻、娘。

娘が、突然言った。

「お父さん、いつまでそれ続けるの?」

「…何が?」

「そのビジネス。いつまで」

「これは、俺の仕事だ」

「仕事じゃないでしょ。詐欺でしょ」

その言葉が、私の何かを壊した。

「詐欺じゃない!俺は実際に稼いでる!」

「お父さんが稼いでるのは知ってる。でも、お父さんの下の人たちは?」

「…努力が足りないだけだ」

「本当にそう思ってる?」

「…」

「お父さん、鏡見たことある?最近」

「見てる」

「本当に?本当のお父さんの顔、見えてる?」

娘の目に、涙があった。

「私、お父さんが怖いの」

「…」

「お父さんの目、死んでる。笑ってるけど、目が笑ってない」

「前のお父さんは、もういない。今いるのは、なんか…ロボットみたい」

「ロボット」

その言葉が、胸に刺さった。

深夜の自問自答

その夜、眠れなかった。

ベッドで、天井を見つめた。

「俺は、幸せか?」

年収3000万円。
タワーマンション。
外車。
1000人からの拍手。

しかし。

妻は隣で寝ているが、背中を向けている。
息子は私を避けている。
娘は私を「ロボット」と呼んだ。
友人は一人もいない。
毎晩胃薬を飲んでいる。

これは、成功か?

そして、もう一つの問い。

「俺は、誰かを幸せにしたか?」

私の下にいる200人。

彼らは幸せか?

いや、違う。ほとんどが赤字だ。借金している人もいる。

しかし、彼らは私を信じている。

私は、彼らの希望を食べて、生きている。

この認識が、初めて言語化された。

朝の決断…しなかった決断

翌朝、目が覚めた。

一瞬、思った。

「今日、全部やめよう」

しかし、スマホを見た。

SNSの通知が、100件以上。

「田中さん、今日のセミナー、楽しみです!」
「田中さんのおかげで、人生変わりました!」
「田中さん、憧れです!」

そして、今日の予定を見た。

10時:ダウンラインとの面談
13時:新規見込み客との商談
15時:グループミーティング
19時:大型セミナー

全部、キャンセルできない。

200人が、私を待っている。
会場は、予約済み。
チケットは、売れている。

今日やめることは、物理的に不可能だ。

「じゃあ、明日」

しかし、明日も予定は埋まっている。

では、いつ?

答えは、分からない。

だから、私は立ち上がった。

スーツを着た。

鏡の前で、笑顔を作った。

「今日も最高の1日にしよう!」

ロボットの起動完了。

頂上から見える景色 – 下にいる人々は、幸せそうに見える

セミナー会場。

私は壇上にいる。300人が下にいる。

彼らは、キラキラした目で私を見ている。

「田中さんのようになりたい!」

しかし、私は思う。

お前たち、分かっているのか?

この場所は、地獄だ。

下の方が幸せだった

ふと、気づく。

私が一番楽しかったのは、下にいた時だった。

ブロンズランクだった頃。

まだ会社員で、副業としてやっていた頃。

失うものが少なかった。
期待されていなかった。
演じる必要がなかった。

「いつか成功する」という希望があった。

しかし今、私は成功した。

希望が、実現した。

そして、気づいた。

実現した夢は、もう夢ではない。ただの現実だ。

そして現実は、夢より遥かに重い。

降りたい、でも降りられない

壇上から、下を見下ろす。

ブロンズランクの若者が、目を輝かせている。

「いつか、あそこに立ちたい」

降りたい。その席、代わってくれ。

しかし、それは言えない。

なぜなら、私は「成功の象徴」だから。

もし私が「実は辛い」と言ったら、全員が崩壊する。

私は、みんなの希望を背負っている。

そして、その希望が、私を殺している。

ある日の選択 – 私は、どちらを選んだのか

そして、ある日。

決定的な瞬間が来た。

妻の最後通告

朝、妻が言った。

「私、もう無理」

「…何が?」

「この生活。もう耐えられない」

「…」

「離婚したい」

その言葉を、どこかで待っていた。

「…そうか」

「それだけ?」

「…他に、何を言えばいい」

「『やめる』って言ってほしかった。『一緒にやり直そう』って言ってほしかった」

言えなかった。

なぜなら、その言葉は、全てを手放すことを意味するから。

年収3000万円。
ダイヤモンド・エグゼクティブの肩書き。
1000人からの拍手。
SNSの15万フォロワー。

これら全てと、妻。

天秤にかけた。

そして、私は…

選ばなかった選択

私は、答えなかった。

「…ちょっと、考えさせて」

妻は、悲しそうに笑った。

「やっぱり、そう来るんだ」

「今すぐは決められない」

「もう十分考える時間あったでしょ。5年も」

「…」

「私、もう待てない。来月、実家に帰る。離婚届、置いていく」

妻は、立ち去った。

そして、私は一人、リビングに残された。

その日のセミナー

その日の夜、私はセミナーで壇上に立っていた。

「皆さん、成功とは何か。それは、自由を手に入れることです!」

自由。

私は、何も自由じゃない。

「家族との時間を大切にしながら、稼ぐ。それがこのビジネスの魅力です!」

家族は、去ろうとしている。

「私は幸せです。皆さんも、必ず幸せになれます!」

幸せではない。

しかし、私は笑顔で言い続ける。

拍手が鳴る。

「田中さん、最高です!」

最高ではない。最低だ。

エピローグ – 私は今も、ここにいる

これを書いている今も、私はダイヤモンド・エグゼクティブだ。

妻は、去った。離婚届にサインした。
息子は、妻についていった。
娘とは、1年間連絡がない。

タワーマンションに、一人で住んでいる。

年収は、3500万円に増えた。

しかし、誰もいない。

なぜ、やめないのか

あなたは聞くだろう。

「なぜ、やめないんだ?」

答えは、複雑だ。

やめられない理由が、10個ある。

  1. 経済的に依存している
  2. アイデンティティが消える
  3. 200人のダウンラインを裏切れない
  4. 他にできることがない
  5. 年齢的に再就職が困難
  6. 「失敗者」になりたくない
  7. これまでの5年間が無駄になる
  8. やめ方が分からない
  9. やめた後の人生が想像できない
  10. そして…これしか、自分を証明する方法がない

私は、成功に囚われている。

金の檻。

外から見れば煌びやかだが、中は空っぽだ。

下にいる君へ

もし、あなたが今、私を目指しているなら。

立ち止まれ。

私は、成功の見本ではない。

私は、失敗の完成形だ。

金は手に入れた。
しかし、他の全てを失った。

これは、勝利ではない。

そして、最も恐ろしいのは。

私は、やり直せない。

時間は戻らない。
妻は戻らない。
子供との時間は戻らない。
友人は戻らない。

頂上には、誰もいない。

なぜなら、頂上に立つために、すべてを置いてきたから。


P.S. – ある深夜の独白

この文章を書いている今、午前3時だ。

胃薬を飲んだ。今日で4錠目。

明日、いや今日、午後にセミナーがある。

500人が来る。

私は、壇上で笑顔を作る。

「成功は、素晴らしい!」と叫ぶ。

そして、夜、このタワーマンションに帰ってくる。

誰もいない部屋。

高級家具。大きなテレビ。眺めのいい窓。

しかし、誰もいない。

誰かに、電話をかけたい。

しかし、誰にかければいい?

連絡先を、スクロールする。

300人以上いる。

しかし、電話をかけられる人が、一人もいない。

そして、気づく。

私は、年収3500万円の孤独だ。

これを読んでいるあなた。

もしあなたが年収300万円で、でも愛する人がそばにいるなら。

あなたの方が、遥かに金持ちだ。

なぜなら、私が失ったものは、金では買えないから。

頂上は、誰もいない場所だった。

そして、ここから降りる階段は、ない。

私は、ここで一生を終える。

これが、成功だ。

終わり

誤解されないように言っときますがこれはあくまで情報商材の視点から派生したルポルタージュですからね。私の体験じゃないですよ。そこんとこよろしく。

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