実践編⑥:画面が真っ赤になっても心停止しない!エラーメッセージはAIへの「ネタ振り」だと思え

あなたは調子に乗っていた。「私って天才エンジニアかも?」と。

しかし、実行ボタン(▷)を押した瞬間、世界は一変する。

画面上部に表示される、毒々しい赤色の帯。

そこに書かれた英語の羅列。

Exception: The parameters (String) don’t match the method signature…

あなたの心拍数は上がり、手は震え、そっとブラウザを閉じようとする。

「やっぱり私には無理だったんだ……」

待て。早まるな。

その赤い文字は「あなたの無能証明書」ではない。

単にコンピュータが「え? 今なんて言ったん? よく聞こえんかったわ」と言っているだけだ。

今回は、この恐怖のエラーメッセージを、AIへの「ツッコミ待ち」に変える最強のメンタル管理術を教える。

1. 【発端】英語のエラー文なんて読むな

まず、大原則を言おう。

エラーメッセージを自分で読もうとしてはいけない。

我々日本人は、英語で怒られると必要以上に萎縮する習性がある。

「Parameters… match… signature…? 署名? 契約書の話? 何?」

真面目な人ほど辞書を引き、文法を解読し、そして絶望する。

時間の無駄だ。

その英語は、あなたに向けられた言葉ではない。AIに向けられた暗号だ。

あなたがやるべきは、解読ではなく「転送」である。

2. 【翻訳】「なんか怒られたんだけど?」という逆ギレ

エラーが出た時の正しい作法。

それは、エラー文を丸ごとコピーし、AIに「逆ギレ」と共に投げつけることだ。

【AIへの指示メモ(メンタル)】

  • 態度: 私は悪くない。コードを書いたお前(AI)か、融通の利かないGoogleが悪い。
  • アクション: エラー文をコピペする。
  • セリフ: 「なんか動かないんだけど? 直して。」

これだけでいい。

実際に、よくあるエラーと、それに対するAIとの「漫才」を見てみよう。

ケース1:単純な書き間違い(Syntax Error)

エラー文: SyntaxError: Unexpected token ‘}’

あなたの心: 「予期せぬトークン? 誰か来たの? 怖い!」

【AIへのプロンプト】

「おい、このエラーが出たぞ。さっきお前が書いたコードだろ! どうなってんだ!」

(エラー文を貼り付け)

【AIの返答】

「申し訳ありません! コードの最後にある } が一つ多いようです。閉じ括弧を消し忘れていました。修正版はこちらです。」

【解説】

これは「文章の最後に『。』を2回書いちゃった」レベルのミスだ。

人間ならスルーしてくれるが、プログラムは「文末が2回ある!意味不明!」とパニックになる。AIに指摘させれば一瞬で直る。

ケース2:存在しないデータを呼んでいる(TypeError)

エラー文: TypeError: Cannot read property ‘0’ of undefined

あなたの心: 「未定義…? プロパティ…? 私の存在が未定義ってこと…?」

【AIへのプロンプト】

「なんか『読めない』って文句言われた。スプレッドシートはちゃんとあるのに! 意味わからん!」

(エラー文を貼り付け)

【AIの返答】

「あ、スプレッドシートのデータが『空っぽ』なのに、1行目を読もうとしていますね。お皿に何ものってないのに『味はどう?』と聞いている状態です。データがあるか確認するif文を追加しましょう。」

【解説】

これは初心者が一番ハマる罠だ。

AIは優しく「データがない時の処理」を追加してくれる。あなたは「最初からそう書けよ」と言ってコピペすればいい。

3. 【実践】デバッグの実演(コピー&ペースト)

では、実際にエラーが出た時の「修正フロー」を体験しよう。

  1. 実行してエラーが出る。
  2. 赤い帯の中の文字を、マウスでガーッと選択してコピーする。(意味は分からなくていい)
  3. ChatGPTの画面を開く。
  4. 「このエラーが出た。修正して。」 と書いて、貼り付けて送信。
  5. AIが「ここが原因です」と解説付きで修正コードを出してくれる。
  6. 「解説はいいから、全コード書いて」 と追撃する。(修正箇所だけ教えられても、どこ直せばいいか分からないから)
  7. 出てきたコードをGASに上書きして、再実行。

——治った。

これが「マンザイ・デバッグ」だ。

あなたはボケ(エラーを出す)、AIがツッコミ(修正する)。このコンビネーションさえあれば、どんなエラーも怖くない。

4. 【仕上げ】エラーは「経験値」である

不思議なもので、この漫才を10回くらい繰り返すと、あなた自身も少し賢くなる。

「あ、undefinedって出たら、データが取れてないんだな」

「Syntaxって出たら、カッコの閉じ忘れかな」

最初は全部AIに投げていたのが、次第に「AIに投げる前にちょっと見てやるか」という余裕が出てくる。

そうなれば、あなたはもう「初心者」ではない。「中級者」の入り口に立っている。

だから、画面が真っ赤になってもパソコンを閉じるな。

「おいAI、ネタの時間だぞ」 とニヤリと笑え。


(実践編⑥ 終了)


【実践編⑥ 付属資料】

今回は「ツールを作る」回ではないため、「わざとエラーが出るダメなコード」と、それを「AIに直させた修正コード」の比較を掲載します。

「どこが間違っているか」を探す間違い探しとして楽しんでください。

1. エラーが出るダメなコード(The ボケ)

このコードをGASに貼り付けて実行すると、必ずエラーになります。

JavaScript

function badCodeExample() {
  // スプレッドシートを取得しようとしているが...
  var sheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet().getActiveSheet();
  
  // ★間違いポイント1:変数名が違う
  // ここでは "data" と定義しているのに...
  var data = sheet.getDataRange().getValues();
  
  // ここで "date" を使っている(スペルミス!)
  // エラー:ReferenceError: date is not defined
  console.log(date); 

  // ★間違いポイント2:全角スペースの罠
  // 以下の行、見た目は普通だが「全角スペース」が混じっている
  var message = "こんにちは"; 
  // エラー:SyntaxError: Invalid or unexpected token
  
  console.log(message);
}

【この時のAIへのプロンプト例】

「ReferenceError: date is not defined って出た! dateなんて書いてないぞ!(書いてる)」

「SyntaxError って出た! 何も間違ってないはずなのに!」


2. AIが修正したコード(The ツッコミ)

AIにエラー文を投げつけると、以下のように修正してくれます。

JavaScript

function fixedCodeExample() {
  var sheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet().getActiveSheet();
  
  var data = sheet.getDataRange().getValues();
  
  // 修正1:変数名を "data" に統一しました
  // プログラムは一文字違うだけで他人だと認識します。
  console.log(data); 

  // 修正2:全角スペースを半角スペースに直しました
  // プログラムにとって全角スペースは「謎の記号」です。
  var message = "こんにちは"; 
  
  console.log(message);
}


【まとめ】

  • 変数名のスペルミス(data vs date)
  • 全角スペースの混入

これらは、プロでもやるミスです。

しかし、人間の目で見つけるのは困難です(特に全角スペース)。

だからこそ、「自分の目を信じず、AIにコピペする」。これが最強の攻略法です。


箸休め回は以上です。

さて、心も軽くなったところで、次回はいよいよ**実践編の最終章(あるいはハイレベル編)です。

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