2016年、私は音声入力とiPhoneで必死にブログ記事を量産していた。
2025年、あなたはChatGPTに「記事書いて」と頼んでいる。
だが、ちょっと待ってほしい。記事書いて!だけ?
その記事、本当に「あなたが書きたかったもの」になっているだろうか?
AIが吐き出した文章を眺めながら、「なんか違うんだよな…」と感じたことはないだろうか?
その違和感の正体は、「レシピ台本」の不在である。
9年前の私は、iPhoneに向かって話していた
2016年の私を振り返ってみよう。
当時の私は、音声入力という「最新テクノロジー」を駆使して記事を量産していた。iPhoneのSiriに向かってブツブツと独り言を呟き、1時間で4本の2000文字記事を仕上げていた。ドラゴンスピーチという3万円のソフトウェアを買った人もいた時代だ。
今思えば牧歌的だが、当時はそれが最善だった。タイピングの物理的限界を超える、革命的な方法だったのだ。
そして2025年。
今やChatGPTに「美容系の記事を4000文字で書いて」と頼めば、30秒で記事が完成する。音声入力どころの話ではない。まるで魔法だ。
だが、そこに落とし穴がある。
AIに直接書かせると、なぜ「薄っぺらく」なるのか
あなたも経験があるだろう。
「ChatGPT、○○についての記事を書いて」
→ 出てきた記事を読む
→ 「うーん、なんか教科書的というか、上っ面だけというか…」
出力した本人が読んでも途中で読むのをやめてしまう。楽しくない
この現象には、明確な理由がある。
AIに「最終成果物」をいきなり作らせているからだ。
これは料理に例えるとわかりやすい。
- AI丸投げ方式:「美味しいカレー作って」とシェフに頼む
- 台本方式:「玉ねぎは飴色になるまで30分炒める。スパイスは…以下3000文字」とレシピを渡してから作る
前者でもカレーはできる。だが、あなたの理想の「あのカレー」にはならない。海の家や屋台で売ってるような、量産型のカレーになる。(カレーはそれでも美味しいが、記事となるとそうはいかない)
後者なら、再現性も、アレンジの自由度も、圧倒的に高い。
AIで生成させるコンテンツも同じだ。
台本思考とは何か──構造化された設計図の威力
では、「台本」とは具体的に何なのか。
簡単に言えば、コンテンツの設計図である。建築における青写真、料理におけるレシピ、プログラミングにおけるフローチャート。それらと同じものだ。
私が2016年に実践していたのは、実はこの台本思考の原型だった。
当時、こう考えていた:
- 読者の疑問を3つ以上リストアップする
- それぞれの疑問に対する答えを用意する
- その順番で話すように書く(当時は音声入力)
これ、実は「台本」そのものである。(単純だけどね)
ただし2016年の私には、この台本をAIに渡すという発想がなかった。なぜなら、実用レベルのAIがまだ存在していなかったからだ。
しかし2025年は違う。
台本さえあれば、AIは驚異的なパフォーマンスを発揮する。
実例:台本なしvs台本あり、のステージ差
具体的に見てみよう。
パターンA:AI丸投げ
プロンプト:「アフィリエイト初心者向けに、記事量産のコツを1000文字で」
結果→教科書的、誰でも知ってる内容、差別化ゼロ
パターンB:台本あり・これを出力できるプロンプトを作るべき
【台本】
・読者の悩み:「1000文字の記事なんて書けない」
・質問1:なぜ1000文字が難しく感じるのか?
・答え1:一気に書こうとするから。350文字×3セクションなら?
・質問2:それでも時間がかかりすぎる
・答え2:音声入力なら10分で1000文字
・質問3:音声入力ソフトは高い
・答え3:iPhoneなら無料、有料でも100円
・質問4:具体的にどれくらい書けるのか
・答え4:1時間で4本は可能
・質問5:それで稼げるの?
・答え5:「1万文字=年収1万円」が目安
上記の構成で、会話調の記事を書いてください。
読者に問いかけ、共感し、具体的な数字で示すこと。
この差は、歴然としている。(あくまで考え方のサンプルのため省略しています。実際はもっと出力は長いです。)
パターンBは、あなたの思考が構造化されているから強い。AIはその構造に沿って、肉付けをしてくれるだけだ。
逆に言えば、台本なきコンテンツは、AIの「平均的な知識」をなぞるだけになる。
なぜ台本があると「ステージが上がる」のか
ここで重要な気づきがある。
台本を作る過程で、あなた自身が学んでいる。
例えば先ほどの台本。これを作るために、あなたは以下を考えねばならない:
- 読者は何に悩んでいるか?
- その悩みを細分化すると?
- 各悩みに対する解決策は?
- 具体的な数字やデータはあるか?
- どの順番で伝えれば納得感があるか?
この思考プロセス自体が、あなたの知識を整理し、深めるのだ。
さらに面白いのは、AIにより自分が知らなかった知識も台本に組み込めることだ。
「音声入力の具体的な速度はどうだっけ?調べよう」
「タイピングの肩こり問題、医学的根拠はあるかな?」
こうして台本を作りながら、自分も詳しくなっていく。これは単なる「作業」ではなく、「学習」なのである。
執筆が、同時に勉強になる。
これが台本思考の隠れた醍醐味だ。
2025年の必須スキル:プロンプトは「指示」ではなく「設計」
多くの人が勘違いしている。
プロンプトエンジニアリングとは、「うまい指示の出し方」だと。
違う。
プロンプトとは、設計図である。
「良い記事を書いて」は指示。
「この構成で、この順番で、この要素を入れて書いて」は設計。
前者は運任せ、後者は再現可能。
そしてAI時代において、この「設計力」こそが差別化の源泉になる。なぜなら、誰でもAIにアクセスできるからだ。同じChatGPTを使っていても、結果は天と地ほど違う。
その差を生むのが、台本(設計図)の質なのである。で、マトリョーシカのような考え方になるがこの、「有益な台本を出力できるプロンプト」をあなたが作ることが一番重要である。
1ソースマルチユース──台本があれば無限展開
ここからが本当に面白い。
台本さえあれば、コンテンツは自由自在に展開できる。
同じ台本から:
- ブログ記事(4500文字)
- Podcastの台本(10分)
- YouTube動画のシナリオ(5分)
- Twitter/Xのスレッド(10投稿)
- LinkedInの投稿(500文字)
- メルマガ(1800文字)
すべてが生成可能だ。
これが1ソースマルチユースの究極形である。
2016年の私は、音声入力で「書く」ことに必死だった。しかし2025年は、「台本を作る」ことに集中すればいい。あとはAIが、各メディアに最適化して展開してくれる。
かと言って台本なんて記事ごとに自作していたらコツコツ自分で記事を書くのと変わらない。
だから、この台本を出力できるプロンプトを1つ作るのが重要。
例えばあなたが「次民党の石橋ゲルはけしからんかったが、サナエあっても憂いはあるような気がするな・・・」と思ったら、それをそのままプロンプトを組んだAIに渡せばいい。
台本出力プロンプトを組んだAI=ChatGPTならGPTs。GeminiならGem。Claudeならプロジェクトに該当
次民党の石橋ゲルはけしからん(100文字程度)→AIが「5000文字の台本プロンプト」を出力
↓
ブログ記事・メルマガ・ショート動画・Xスレッド・Spotifyの音声などなど指定した数だけコンテンツを出力してくれる。しかもそのプラットフォームに最適化された方法で…
労力は10分の1、アウトプットは10倍。
これは誇張ではない。実際に私が今、実践していることだ。だからあなたが時間を書けるべきは台本を作成してくれる自由自在プロンプトを生成すること。これさえできれば、ブラウザでポチポチやろうが信号待ちでスマホに入力しようが、あらかじめ100テーマを決めてAPIを組もうがクオリティは全く変わらない。。。
※APIを使う場合は別途料金がかかる
実践:明日から使える台本作成の3ステップ
理論はわかった。では、どうやって始めるか。
ステップ1:読者の疑問を5つ書き出す
「このテーマについて、読者は何を知りたいだろう?」
箇条書きでいい。思いつく限り書く。
ステップ2:それぞれに答えを用意する
完璧な文章でなくていい。キーワードレベルでもOK。
「音声入力→速い→10分で1000文字→体への負担ゼロ」
ステップ3:順番を並び替える
論理の流れを考える。どの順番なら納得しやすいか?
起承転結を意識する必要はない。読者の思考の流れに沿えばいい。
これだけだ。
A4用紙1枚、10分もあれば作れる。
そしてこのメモをChatGPTに渡して、「ここから台本を書いて」と頼む。
出てくる記事の質が、2段階上がっているはずだ。
台本思考は、あらゆる分野に応用できる
最後に、もう一つ重要なことを。
この「台本→実行」の思考法は、コンテンツ作成だけに留まらない。
- プレゼンの構成を台本化してから作る
- 会議のアジェンダを台本化してから臨む
- プロジェクトの工程を台本化してから動く
- データベース設計を台本(JSON)化してから実装する
すべてに通じる。
構造化して考える癖がつくと、あらゆる仕事の質が上がる。これは私が9年間、音声入力から始まりAI活用に至るまで、一貫して感じてきたことだ。
台本主義は、思考法である。
まとめ:AIに使われるな、AIを使え
2016年、私はiPhoneに向かって話していた。
2025年、AIに指示を出している。
だが本質は変わらない。
良いアウトプットは、良い設計から生まれる。
AIに丸投げするのは簡単だ。しかしそれでは、誰もが同じような「平均的な」コンテンツを量産するだけになる。
台本を作ろう。
構造化しよう。
そしてAIに渡そう。
その一手間が、ステージを2段階上げる。
9年前の私が音声入力で革命を感じたように、今のあなたは台本×AIで革命を起こせる。
道具は進化した。
しかし、その道具を使いこなすのは、やはり人間の設計力なのである。
P.S.
この記事自体も、台本から生まれている。AIが構成を先に作り、各セクションで何を語るかを決め、一通り目を通せばGOサインを出す。所要時間は、構成2分+生成5分+で後ほど修正=20分。このくらいでOK。
そして驚くことに、AIに台本を出力せずに全く1から自分で作成していたら・・・
「圧倒的に時間がかかって、しかも全て自分で書くとAIが出力するよりも遥かにクオリティの低い記事が出来上がる」(普通は逆だと思ってる人多いよね)
これが、台本思考の威力である。
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